スリッパ

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時刻はお昼12時になる頃。 白を基調にした明るい本館での会計待ち。 広いフロアーの半分に並べられたプラスチック製の連結したイス。 一塊に10脚のイスが横に繋がり、一列に二つの塊が並ぶ。 その列がざっと見ただけで50以上、薬を待つ人が犇めいている。 息苦しい密接した空間に耐えられず、僕は会計終了を知らせる電光掲示板の番号が見える通路で、大きくヒヤッと冷たい柱にもたれ掛かって順番を待つ。 その柱を境に右側がイス、左側は通路と受付や入院受付、当日外来受付のカウンター。 このフロアーの事務所で働く人数だけでもかなりの数だ。 会話の声も様々、説明、苦情、悲痛な訴え、案内、更にパソコンを弾く無数のキーボード音、ガラガラ台車を引く音。 僕はしばらく目を閉じていた。
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