第1章

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 2020年東京オリンピックが終わって数年後の近未来の東京。若くして下町の小さな寺の住職を継いだ主人公の僧侶、正源はある日人形供養の依頼を受ける。だが人形供養だと思ったのは彼の早とちりであり、実際に持ち込まれたのは人型の介護用ロボットだった。  行きがかり上アドリブでロボットの供養をこなした事がきっかけで、正源はロボットを供養してくれるお坊さんとして名が売れ始め、富裕層から様々な依頼を受け、寺の経営も潤う。  一方で、地方都市で老後破産した身元不明の遺体や出稼ぎ外国人労働者の遺体がまとめて物のように扱われる場にも立ち会う。  少女買春撲滅のために普及した少女型性風俗ロボットが不法投棄された産業廃棄物処理場での供養もする。だが性風俗産業では用済みになった、貧困家庭の少女たちが繁華街の道端で物乞いをしている現実を見て、世の中に対する違和感が増していく。  国防軍から、海外での軍事作戦で使用された軍事用ロボットの供養を頼まれるが、それを断り、人の形をしたロボットのみを供養の対象とすると決意する。  ロボット供養の宣伝を引きうけてくれた同門の僧侶と会った帰り道、人々が墓そのものに興味を失い、無関心になった結果、取り壊される事になった墓地を目撃する。  重機でなぎ倒されていく墓石を見ながら、正源は今の時代の僧侶の役割、存在価値に疑問を抱きつつも、黙ってその場を去るしかなかった。
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