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三年後。
あの日、タイムカプセルを埋めた別の桜の木の下に、私達は集まっていた。今日は中学の卒業式でまだ2050年どころか成人式にもなってないけど…。
タイムカプセルを掘り起こす理由があった。
3年前、逆タイムカプセルを掘り出した日の真夜中。
リリカは自宅の15階建のマンションから突然飛び降りて死んだ。
私達は信じられなかった。
卒業したはずの小学校で緊急集会やいじめの調査も行われた。だが、そんなことがあるはずもない。
リリカの遺体からは破損が酷く復元不可能なメモリーカードが見つかり、部屋には手紙を燃やしたような跡があったそうだ。
逆タイムカプセルに関係があるのではないかという気もしたが、信じてもらえそうにないので誰も大人には話さなかった。
結局、原因は解らずじまい。
そして、リリカの両親が引っ越す事になったため、連絡がつくうちにタイムカプセルを掘り出してリリカの物を渡そう、という話になったのだ。でも、集まったのはクラスの半分くらい。
「リリカ、みんなより先にメモリーカードを一人で見たのかな。何が入ってたんだろう」
コウキが呟いた。
「うーん、手紙には明るい未来が書いてあったけどそれは嘘で、実は悲惨な未来だったとか、かな?」
「だからって、何も死ぬことないのに…」
「やめなよ。理由が解ったってリリカが生き返る訳じゃないし。」
と、私は言い返したものの。
コウキはリリカの分まで野球を頑張ろうとして肘を傷めてしまい、強豪校への入学を断念した。
ナナミは昨年交通事故に遭って以来ずっと意識不明、若くて綺麗だったオカザキ先生は原因不明の難病で長期入院。
クラスの他の子も両親が離婚したり親の事業が失敗して一家離散。もうこの街にはいない。
逆タイムカプセルの手紙に書いてあったように未来が明るいなんてとても思えなかった。
…もし知ってたら何で、あんなこと書いたんだろう?ただの気休め?それとも、生きてたら本当にいいことがあるの?
「…あれ?」
タイムカプセルを掘り出した後、コウキがもう一度穴をのぞき込んだ。
「まだ何か埋まってる?おかしいな…埋めた時にはこんなの、なかったのに」
みんなでのぞきこんで、呆然となった。
板チョコ大のあの「逆タイムカプセル」の容器がまたしても。
そして、宛名は…
「2018年のサクラへ。2050年のサクラより」
私宛だった…。
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