君を見つめてはいけない

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「せんせ~!さよ~ならっ!」 向かいのホームに電車が来る合図のメロディが流れはじめて、そこにいる生徒が僕に向かって手を振っている。 「はい、さようなら」 大きな声を出すのは恥ずかしいから、いつもの声で一応彼女たちに返事をしたけれど、この声は聞こえてないんだろうな。 その時、彼女たちの少し後ろに君が立っているのが見えた。 ハンドメイドのブックカバーに包まれた文庫本を片手に、静かに一人で立っている。 【こっちを...むいて】 心でそう唱える そうしたら、ふっと君が視線をこちらに向けて少し驚いた顔をした。 僕は、君と視線が合ったことが嬉しくて、ほんの少し口元が緩んだ。
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