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たまたま日直で、職員室に日誌を一人で届けることがあって、私は机に向かって小テストの回答をしている先生の横に静かに立った。
「先生日誌です」
「うわっ!あ、ありがとう。ご苦労様です」
私に顔を向けることなく、手だけを伸ばして日誌を掴んだ先生。
私は日誌を掴む手にぐっと力を込めた。
先生は軽く自分のところに日誌が返ってくると思っていたからか、動かないことに不思議そうにゆっくりと顔を上げた。
目にかかりそうな前髪の奥からちらりと見えたのは、キャラメルブラウンの瞳。
でも、その瞳は私の顔は見ていない。
ちくりと、胸が痛くなる。
「日誌、返してくれないの?」
「先生は...」
先生の言葉を遮って、私は心にがまんしていた言葉を先生に向けた。
「先生はどうして私の顔を見てくれないんですか」
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