第4話 そして始まる…歪な礎

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よく冷えたお水を含んで緊張で乾いた喉を潤す。 こくりと喉の音がBGMよりも大きく私の耳に響く。 ドキドキと期待なのか、恐怖なのか解らない鼓動がうるさい。 ガチャリと扉が閉まる音。 「はぁ~お疲れ~」 初めて聞いた、倉坂さんの仕事後の、声。 心なしか、いつものしっかりした感じじゃなくて甘くて、可愛い。 「ふふ、お疲れ様です。」 「うん、今日もありがとね。」 煙草を左手に、右手に自分用のコーヒーが入ったグラスを手に持ち、 さりげない動作で私の左側に座った。 でも、けれど、 距離が…異様に近い気が… 「…ふ。緊張、してるね。」 「っえ!」 「あの日とさっきまでの堂々さはどこ行ったのさ(笑)」 「いや、えっと、別に緊張とかじゃ…」 意識してうまく頭が回らないだけで… 真っ直ぐ体を私に向けて見つめてくる倉坂さんに、目線も手も落ち着かなくて。 煙草をくわえる指や唇の動きにまで、色気を感じてしまうなんて… 「!?」 見惚れている私の死角にあった倉坂さんの右手が腰に当てられ強引に引き寄せられた。 「え、あ…」 しっかりと私の顔や目を見つめる倉坂さんの視線が、強すぎて逸らせない。 きっと今私、情けない顔してる。 不安で怖いのに、こんない近くに倉坂さんが居ることにドキドキして、嬉しくて… 欲情してる。 気恥ずかしくなってつい、倉坂さんの唇に目線が行った時だった。 すっと目を細めて倉坂さんが私のうなじに右手を当てて、左手の親指で顎を撫でた。 ゆっくり近づく動作が、あまりにお互い自然で、 重なる唇が、柔らかくて心地よかった。 次いで深くなる口づけは理性を壊すのには十分すぎて、 何かが音を立ててむき出しになった気がした。 【幸せになりたい  幸せにしたい  あなたのモノになりたい  触れていたい  触れ合っていたい  私だけのあなたがいい  私の足元はこんなにも覚束ないのに  願ばかりが募って止まない】 誰が歌っているのか解らないBGMが 叫びに聞こえた。  
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