第1章

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な、花が咲くよね。大丈夫、殺したりしないよ。ちょっとお兄ちゃんの小指を切り落として、赤い血を流してもらうだけだから、んしょっと、私、ノコギリ、あんまり使ったことないけど、頑張るね。んしょっ、んしょっ、んしょっ、もう、お兄ちゃん、うるさいよ。男の子なんだから少しくらい我慢できないの? それともあのバカっぽい女と繋がりが消えちゃいそうで怖いの? あんな女のどこがいいの? わけわかんないよ。お兄ちゃんは、私だけ見てればいいのに、どうして、他の女ばっかり見るの? ねぇ、それって私達が兄妹だから? ねぇ!! 答えてよ!!」 とそこで、 「はいっ、オッケー。休憩に入ります」 とスタッフさんが大きな声で言った。私はフウッと一息ついて、ソファーに座ると年上のお兄さんがペットボトルを手渡してくれる。私はありがとうございますと答えて受け取った。  「かなりの長セリフだったけれど、頑張ってたみたいじゃないか」 「エヘヘ、何度も練習しましたからね。それに、私もお気に入りのキャラクターでたから」 と答える。ヤンデレ妹のドラマCDの収録中だ。主に主役は妹で、セリフもほぼ、一人という大役だ。声優の道はとても、狭くて遠い、与えられたチャンスは何が何でも物にしなければいつまでもデビューなんてできない。 「ふーん、俺には、ああいう気持ちはちょっと理解できないけどね。そこまで好きになれるものなの?」 「命、短し恋せよ乙女とも言いますよ。それにアネモネの花言葉には、はかない夢とは別にはかない恋、それと君を愛するって意味もあるんですよ。とってもステキじゃないですか」 当然ですと、答えるとお兄さんは、曖昧笑みを浮かべた。わかってないけれど、 「まぁ、貴方が朴念仁なのは知っているのでとやかく言うつもりはありません」 プイッとちょっと拗ねたように答えつつ、彼の困った顔をこっそり見つめた。 私はアネモネが好きだ。これは演技でもなんでもない、たとえ、かなわない恋でも続けていればいつか成就するかもしれないし、仮にしなくても、そのときはポケットに忍ばせたカッターナイフをそっと撫でてた。そのときは、カッターナイフの出番だ。
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