『罪と蜜』

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 翌朝、今度はすっきりと目が覚めた。  朝の日差しが、閉じたままのカーテンの隙間からでも射し込んできて、少し眩しい。  いつもと変わりない日常で、面倒な仕事をこなすために洗面所へと向かい、支度をしている最中に電話が鳴った。  ……こんな時間に誰だ?  不審に思いながら受話器を取ると、会社の事務員からであった。  社長も隣にいるようで、電話越しにでも分かるくらい焦った様子で言われた。  実は欠陥住宅であったらしい会社で建物が傾き、危なくて事務所もオフィスすらも使えず、このままでは仕事にならないためしばらく休業になるとの話であった。  どうやら社員全員に話が行き渡っているらしく、会社の都合でそうなったのだから、その間はちゃんと給料も出すと保証してくれた。  思いがけない事でちょっと嬉しかったが、同時に疑問も脳裏を掠める。
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