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「やった…!数学198点…!」
返ってきた答案用紙を見て、オレはガッツポーズを決めた。
テスト勉強と言いながら甘~い時間も過ごしたが、緩急のけじめというか、オンオフのけじめというか…。
やっぱりレオはスパルタだった。
「…そこまで採れて何であと1問落としてんだよ」
「んぐっ!」
答案用紙を後ろから盗み見したレオが言った。
オレは勢いよく振り返って、レオの手からレオの答案を取ろうとする。
「勝手に見るな!そう言うお前はどうなんだよ!」
バッと手を挙げた。
それと同時にレオも気だるく、答案用紙を持つ手を挙げる。
小さいオレの上、レオが手を挙げてしまえば届かない。
(くそっ!このっ!)
レオのシャツの胸元を掴んで、思いきりジャンプする。
「……おい。」
引っ張られたシャツを受けて、レオが呆れた目でオレを見た。
レオの腕が下がったのをオレは見逃さない。
「へんっ」と偉そうに鼻で息つき、オレは手に取ったその答案用紙を広げた。
「げ…!」
「間違う問題なんてあった?」
「…っ!!」
嫌味な言い方。
悪かったな!間違うような問題じゃない問題を間違えて!
ギラギラとレオを睨んでいると、向こう側から歓声が沸き上がった。
「キャー!! 紗希ちゃんすごーい!!」
その声に、オレはピクリと身を動かす。
歓声の上がった方へとゆっくり振り返ると……。
「紗希ちゃん、200点満点だって!」
「!」
興奮気味の近藤みかでがいた。
餅山紗希の方が謙遜している。
「みかでちゃん、声大きすぎ…」
「だってー!凄いじゃん!えー?どんな勉強したのー!?」
女子が集まって、わいわいと餅山紗希を褒め称えていた。
それを見て、悔しい気持ちがわき上がる。
「それ、俺の答案…」
オレの手の中でぐしゃぐしゃになったテストを見て、レオが言う。
そんなの今はどうでもよかった。
(ぐ、ぐやじぃ…!)
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