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「200点も198点も変わんなくない?」
答案用紙を握りしめたまま固まったオレに、葵が言った。
「葵…。中学時代に言われてきただろう?その1点で運命を左右することがあるんだよ。…くそ、悔しい…!」
「確かにそうだけどー…。そんなに悔しがること?あ、涙」
ぽろりと頬に零れる雫を、甲で拭う。
「負けたくない…!」
「はいはい。総合得点じゃ友クンの方が上なんだから気にすることないわよ」
「餅山紗希じゃない…!レオだ!」
「うそ。紗希ちゃんに負けたのも悔しいくせに」
「…う゛」
図星なオレを見て、葵は「ほらね」とため息をついた。
だって、悔しいものは悔しいんだ。
オレだって頑張ったはずなのに…!
「ま、次に繋がる悔しさだよね。次頑張ればいいよ」
葵によしよしと頭を撫でられ、オレはうんともすんとも言わずに机にへばりついていた。
まぁ、テストのことはいいとしよう。
あの体育祭の日からずっと、葵が明言を避けていることがある。
オレは机に顎をつけたまま、葵を見据えた。
「んでさ。結局のところ、西とどうなったんだよ」
このことを聞くと、葵は絶対と言っていいほど話題を変えてくる。
「終わったことはもういいじゃない。それよりさ、テストも終わったことだし、夏休みの計画立てようよ」
この前からこればっかりだ。
「もう夏休みの計画はパンパンだよ。プールに海に、花火に祭りに、…同窓会だろ?」
赤石が帰って来て初めての夏。
同窓会とか大好きそうな赤石が企画した。
中学時代の同窓会をするという。
オレも葵も乗り気ではなかった。
中学時代の葵にはあまりいい思い出がなかったから。
それでも赤石は強引に誘った。
それから逃げられなかった。
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