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数学のテストが返ってきたのを皮切りに、他のテストもざくざくと返ってきた。
全てのおいて、かなりの高得点だった。
でも――…。
「な ん だ よ、こ れ…!!」
レオの点数を見せてもらう度に、オレは歯を軋ませないといけない羽目になった。
ほぼ、満点を叩きだしているこの男。
オレと同じだけの勉強しかしていないはずなのに、この数点の差を見せつけられる。
そしてその数点の差が、オレとレオとの越えられない壁に感じて仕方がなかった。
負けたくないという気持ちは今も健在。
それは恋仲とは関係がなかった。
いつかは絶対、レオをぎゃふんと言わせたい…!
ギリギリと歯を軋ませて悔しがるオレを横目に、葵がレオに言う。
「……すっごい顔。友クン、乙女になっても負けず嫌いは健在なのね」
「そういうところが可愛くない?」
フッと笑っていうレオに、葵は目を丸くした。
「なに?」
「――レオくんってそんなキャラだったっけ?」
「まさか。冗談だよ」
「!」
次の瞬間にはいつもの無表情に戻ったレオに、葵は眉を寄せた。
「それよりさ。西とどうなの?」
「!! レオくんも友クンと同じこと…。だから、別に何もないってば!」
「そう?じゃ俺の勘違いか」
「勘違いって何…っ」
「くっそ~~!レオ、次こそは見とけよ!ぎゃふんと言わせてやんだから!」
「…はいはい。そのセリフ、もう何百回って聞いてるよ」
「……ん? どうした?葵?」
レオと話をしていた葵の顔が浮かなくて、オレは首をかしげた。
そんなオレに葵は「なんでもない」と首を振る。
「倉森ー」
「!!」
するとそこに、西がやってきた。
ギクッと体をこわばらせるのは、葵。
レオの傍に葵がいると気付いて、西も気不味そうな顔をした。
それを見て、オレは無意識の間にニヤニヤしてしまう。
「やめてよ!友クン!」
俯いている葵に肘で突かれた。
西もどこかよそよそしく、レオに会話を続ける。
「数学の参考書貸してくんない?」
葵のことは極力視界に入れないようにしているようだった。
綺麗な顔立ちに、この前の傷のかさぶたが少しだけ残っている。
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