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『ねぇ、あの目見た?
――――・・・気持ち悪い。』
『やめなよ、呪われちゃうよ?』
『こわーい』
キャハハと笑う同学年の子たち、誰のことを言ってるのかなんて簡単に分かってた。
自分でも思う。
気持ち悪い眼だと。
左目は青で右目は灰色。
自覚しているから、右目を前髪で隠しているけどやっぱり風が吹いてしまえば前髪なんて簡単に吹かれてしまう。
隠していたって、いつかは見られてしまう。
この眼を知られてしまえば、気味悪がり誰も近寄ってはくれなかった。
教師や大人たちでさえ、引き攣った笑みを貼り付け要点だけの話を一方的にされるんだ。
そんな生活を繰り返して、私は臆病でちっぽけな人間になった。
周りの人間のせいだと何度も涙を流した。
この瞳のせいだと何度も顔も知らない親を恨んだ。
でも、猫さんと出会って、猫さんに話を聞いてもらって何もかも自分が悪いのだと気付いた。
泣く暇があるのなら、人のせいにする暇があるのなら、勇気を振り絞って自分から歩み寄ればよかったんだから。
「総司、一ッ!」
突如響いた怒声に、いつの間にか過去の世界へ逃避していた私は現実の世界へと戻された。
一斉に腰の刀に手を伸ばした三人に、冷や汗が流れた。
「ったく、こんな時に。」
「厄介ですね。」
ど素人の私でも分かるくらいに、何かが私たちに向かって歩いてくる。
暗闇の中でゆらゆらと揺れるその影に私は無意識のうちに息を飲んでいた。
近付けば近付くほどに、影が増えていく・・・。
あまりの恐怖に目の前にいた斎藤さんの着物を掴んでいた。
ぴくりと動いた斎藤さんは、刀から手を離しこっちに体を向け
「大丈夫だ」
無造作に頭に置かれた手に、私はなぜか安心していた。
「来るぞ」
「下がっていろ。」
土方さんの合図に、私にそう指示を出す斎藤さん。
さっきまで息をするのさえ苦労していたのに、今は自由に動く体に安堵し三歩後ろへと下がった。
「俺らを知っての襲撃か?」
月夜に照らされた道に出てきた影の正体に、私は息を飲んだ。
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