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「んで、お前は何者だ。」
もう何度目になるだろうその質問はまたしてきた土方さんに私はノーコメントと叫んでいた。
「意味の分からねぇことを言ってんじゃねぇ。
そんな破廉恥な恰好をして夜道に倒れていた。
何よりも怪しいは自分の素性を話さないその態度だ。」
「どうせ・・・」
「あ?」
「どうせ殺すんでしょ?」
痺れを切らした私はもはや自暴自棄になっていた。
どこの国にタイムスリップした話を信じる人がいるんだろう。
名前を言ったって、生まれを言ったって、その事実は過去(ココ)にはないんだから、嘘つき呼ばわれして終わりだ。
「別に俺は誰彼構わず殺したりしねぇよ。
全部、話してみろ。
話す価値があると思わねぇか?」
まるで子供に言い聞かすようにそう説得してくる土方さん。
「じゃあ、ヒントをあげます。」
「ひ、ひんと?」
「あー・・・手掛かり・・・?」
「は?俺に正体を暴けって言いてえのか?」
「そうです、一言一句逃さないで聞いてくださいよ。
山崎 烝さんもね。」
もう、当てずっぽうで名前を出せば気づくことも出来ないまま静かに首筋に何かを添えられた。
「山崎」
横にいる何かを制す土方さんに、やっぱり居たんだとドコか感動していた。
「殺してもいいですけど、その前に一つ聞いてもいいですか?」
「なんだ」
横の物体に話しかければ低い声がすぐ側で聞こえた。
「に、忍法とか、忍術とかって本当にあるんですか?」
恥ずかしくなりながらもずっと気になってたことを一生懸命聞いてみた私だったが、暫く流れた沈黙に益々顔が熱くなっていくことに気づいて
「な、なんでもないんです!
興味があったので聞いてみただけなんで!
今のはスルーしてください。
むしろ脳内から今の部分だけ消してください!」
早口に捲し立てた私は目の前で手を交差させて首を振った。
そう、首を振ったんだ。
首に添えられてる何かを忘れて。
「あ、アホ!!」
つーっとつたう生暖かい感触に瞬時に理解した。
手の甲を怪我したときと同じだったから。
もう・・・私ってホントバカ・・・。
「そこ押さえとけ。」
そんな言葉が聞こえたけど、恥ずかしいし、もう意味わからないし、動こうとしたその人を捕まえた。
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