二輪

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「・・・・きて下さい、起きて下さ~い!」 ひそひそっと呼ぶ声にぱちりと目を開けば、目の前には沖田さんがいた。 いつの間にか寝ちゃってたのか・・・ 「おはようございます、もう朝ですか?」 「寝惚けてるんですか? まだ夜中ですよ。 随分とぺらぺらと喋ってくれたみたいだね、君。」 「え?」 「邪魔、しないでくれないかな」 「邪魔?」 「歴史を知っているからって、余計なことをぺらぺら喋らないでくれる?って言ってるんだよ。」 「・・・・歴史」 「土方さんはもう大騒ぎだよ、君の正体が気になって気になって仕方ないみたいだよ。 あいつはタダの人間じゃないってね。」 私は夢でも見ているんだろうか・・・ 今の沖田さんはまるで別人だ。 ニコニコしている訳でもなくて、凄く冷たい目線が私に刺さる。 「君、さ。 タイムスリップ、したんでしょ?」 「・・・・今、なんて言ったんですか?」 「だから、時空を超えて何かをしに幕末に来たんでしょ」 苛々した顔を隠すこともなく冷たく言い放った沖田さんがすごく怖い。 「お、沖田さん? 貴方は、誰・・・なの?」 タイムスリップなんて言葉がこの時代に通用する訳がない。 口角をあげたその口元が、細められたその眼が凄く妖しい。 今、私を見つめてるこの人は誰? 「まさか、歴史を変えるためにココに来たとか言わないよね?」 私の質問に答える気はないのか、自分の言いたいことを口にした沖田さんに私は押し黙った。 「誰を救いたくてきたの? 坂本?高杉?山南?土方?藤堂? あ~・・・僕だった? 池田や事件まであと3ヵ月。 邪魔しようとか考えてないよね?」 どくん、どくんと嫌な脈を打つ私の鼓動をこの人は知っているんだろうか。 幕末の志士である沖田さんが何故歴史を知っているのだろうか。 カチャリという音に、私を閉じ込めている為の鎖が解かれたのが分かった。 ギィーという音にこの隔離された空間に沖田さんが踏み入ってくるのが分かった。 「僕の目が届くところにいる限り、君に生きた心地は与えないよ?」 私の目の前でしゃがんだ沖田さんの目から逃げられない。 「ねぇ・・・、何か言ったら?」 私の唇をなぞるその指にぞくりと寒気が走った。
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