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夢を見た。
いつもの桜の下、猫さんが私に擦り寄ってくる夢。
(華ちゃん、ありがとう。)
そう言って、桜の木に入っていってしまった猫さん。
追いかけたくて、私は猫さんが入っていった桜の木に駆け寄った。
「猫さんッ!」
まるで、水のように私の体は桜の木に入っていった。
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「・・・丈夫ですか?大丈夫ですか?」
どこかから聞こえてくる声、その声は初めて聞く男の子の声だった。
「目を覚ましましたか?どうされたんですか?」
ぱちくりと夢見心地の意識を覚醒させる。
目の前に現れたのは、右横で髪を結った中性的な顔の男の子だった。
「え?」
さっきまで降っていた雨も止まっている。
さっきまで夕方だったはずの空はもう真っ暗だった。
「大丈夫ですか?」
立ち上がらせてもらい、辺りを見渡す私を不思議そうに見つめ聞いてくる男の子。
地面はアスファルトではなく、所々雑草が生えていて、整った道とはお世辞にも言えない。
「は、はい。」
訳の分からぬまま、返事を返せば
男の子の後ろに立つ、二人の男性が見えた。
「総司、大丈夫って言ってるんだからほっとけよ」
「お言葉ですが、土方副長。
相手は女子です故、こんな夜道を一人で帰す訳には。」
「一くんの言う通りですよ、ったく土方さんは馬鹿なんですから。」
私を置いて話し出した男性たちに構う余裕はなかった。
傍には、立派な桜の木があった。
あのいつもの場所の桜とどこか似ている。
でも、違う。
周りの様子も、空気も、何よりも異様なのは男性たち恰好と腰にある刀のようなモノ。
私は今も口論をしている三人に勇気を出して聞いてみた。
「あの、すいません。
ここは時代劇の撮影場所ですか?」
名を呼び合ってるところを見ると、新撰組のなにかの番組なのだろうけど・・・。
「あ?女、なにトンチンカンなこと言ってんだ?」
土方と呼ばれていた人は、切れ長の目が特徴的で威圧されているような錯覚を感じた。
「あ、だから、あなたが土方歳三役で、あなたが斎藤一役、そしてあなたは沖田総司役なのですよね?」
私が言葉を繋げば男の人たちは眉を顰め、まるで怪奇な者を見るようなそんな顔をしていた。
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