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「やっぱり、この時間は他にお客さんいないんですね」
女の子は、独り言のような小さな声で俺にそう言った。
帽子をさらに深く被ったため、表情が分からない。声音からも表情が読み取ることが出来ない。
まるで無の感情・・・・・無心と言うべきか。
どこか不吉な感じがした。
「ええ、まあ、今日は1年の最後ですし、この時間だから、お客さんはめったにこないと思いますよ!」
あははー、と愛想笑いをして女の子の問に答える。
「ふーん・・・・・じゃあ決めた!」
「あ、何かご注文ですか?」
さあ、どれがくる?
熱々のおでんか?
それとも人気のからあげちゃんか?
もしかして、Nチキか?
「・・・・・・・・・・ください」
「はい?」
「・・・・お・・・・・さんの・・・・・ち・・・・・ください」
「すいません、お客様聞き取れませんのでもう一度お願い出来ますか?」
なかなか聞き取れないため、顔を女の子に近づけて聞き取りやすい位置にもっていく。
「お兄さんの命ください」
「は・・・・い?」
その刹那、右眼に今まで味わったことのないような激痛が走った。
そして、顔に生暖かいものが流れていく。
「くっ・・・・・!?な、な、なんだよ・・・・・これ・・・・・血?」
あまりの痛さに右眼を抑えつけると、見たこともないくらいの量の真っ赤な血が俺の手をつたって流れていた。
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