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「おれはおまえさんとはパワーの桁が違うんだ。人間の相手なんて危なっかしくてできやしねえよ」
少女は口笛を鳴らして言った。「筋肉馬鹿は言うことが違うねえ。おれだって牙を使えば人間なんて瞬殺さ」
そうこうしていると、会場のほうから試合終了のゴングが聞こえてきた。
「お、いよいよおまえさんの出番のようだぜ」
泰造に促されて少女は立ち上がった。黒服に「こちらです」と、会場のほうへと通され、狭い通路を抜けて開けた会場に立つと、控え室とは段違いの熱気が彼女を襲った。突如、歓声が沸き上がる。
「続いての入場者は、最近巷を騒がせている新進気鋭の美少女ストリートファイター、リプカだぁー!」
マイクを持った実況者がまくし立てると、場内の歓声はよりいっそう強くなった。リプカと呼ばれた少女はその歓声に答えるようにして右の拳を高々とかかげてみせた。こうすることでよりいっそう会場が盛り上がるということ泰造から教えられているからだ。
そしてリプカはロープをくぐってリングの上へと上がる。
「さあ、そして今宵彼女と対戦するのは、池袋で名を馳せた腕っぷし自慢のアウトロー、佐竹淳二だぁー!」
リプカの側からリングを挟んで正面に位置する通路から現れたのは短髪を緑色に染め上げ、泣きぼくろの位置に涙マークの刺青、背中一面には不動明王の刺青が入った強面の男性だった。 佐竹淳二もリプカと同様にリングへと上がる。
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