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「ルールは簡単、三分一ラウンド決着、頭突きありの喧嘩マッチだ! それでは両者、位置に着いて!」
その言葉にリプカと佐竹淳二はリングの上で向かい合った。身長差はかなりのもので、リプカが佐竹淳二の顔を見上げるにはやや首が痛いくらいだ。ゴングを待つオーディエンスは静まりかえり、両者は互いにファイティングポーズをとる。リプカのファイティングポーズはあまりに異様で、背中を曲げて身を極端に低く構え、手はマットに着きそうな位置にある。その姿はさながら獲物を狙う肉食獣のようだ。
「おいガキ、女だからって容赦はしねえぞ」
佐竹淳二の言葉をリプカは平然と無視をした。この手の手合いは口で何を言っても無駄なだけだからだ。一度こらしめてやらなければわからないらしい。
「へっ、いい度胸してやがるじゃねえか」
両者は静かに睨み合い、ゴングが鳴る瞬間をただ待つ。静寂――そしてけたたましい音をたててゴングが鳴ると、観客席からは音の波のような歓声が息を吹き返した。
佐竹淳二は最初からスタミナ配分を度外視した猪突猛進のスタイルでリプカへと突っ込んできた。繰り出される右のストレートをリプカは左へ跳ねて難なくかわす。
リプカは右の拳を突き出してガラ空きになった佐竹淳二の右の脇腹を穿つ。ヒトの拳によるパンチというものはどうにも様にならない。
だが、佐竹淳二に確実にダメージを与えたようで、彼は軽くむせ返してから左のバックハンドブローを放った。
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