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嫌なら、断ればいいのに。
っていうか、睨んで逃げていくのなんて、緋芽くらいのもんだよ。
だって、それ、本気じゃないじゃん。
「ねー、したくないなら、あたしが持ってくよー?」
廊下をスタスタ歩く後ろ姿を追い掛ける。
相変わらず忍者。水面がほぼ揺れない。
「宇佐見って、一応人を気遣ったり出来んだな」
明らかな嫌味。
「出来るもーん。気遣うふりくらい」
「……そうか。出来たら、それバラさねーほうがいいぞ」
「抜き足、さし足ー」
「人の話聞くふりも身に付けとけ」
噛み合わない会話で、蛇口のある場所まで。
汚れた水を捨てて、水を入れ直す。
バケツの底まで透き通って見える水は、見てて気持ちがいい。
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