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「ううん……」
「何で謝るの?」って聞きたかったけど、答えが分かるから、それ以上続けるのはやめた。
あたしは、何を言うべきだったんだろう。
「告白しないの?」って、どうしても言えない。
あたしが、真幸くんを好きだから。
「久我先輩のこともね、本当は名前で呼びたかったんです。……呼べないの。なんか……用がないときも、いっぱい呼んじゃいそうだったから」
真幸くんが言ってた。自分のことだけ名字で呼ぶから、沙柚ちゃんに嫌われてるって。
逆だよ……。
「そんなことしてたらね、明日奈先輩にめっちゃ邪魔されるようになって。久我先輩に近づこうとすると、ネチネチネチネチ嫌がらせして下さりやがって。我慢できなくて……」
「沙柚ちゃん……」
何か言わなきゃって、名前を呼ぶけど、何も出ない。
「でも、ちょうどよかったんですよ。どうせ告るつもりなんか、一切なかったんで」
沙柚ちゃんは、フッと軽く笑い、
「姉さん、また泣きそうな顔ですね。大丈夫です。うちは、もう久我先輩を嫌いになるんです」
冬の寒さに身を震わせた。
「うお、めっちゃ寒!姉さん、中に入ろうぞ」
「うん……」
本屋の中に入って、沙柚ちゃんとはそこで別れた。
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