114人が本棚に入れています
本棚に追加
真幸くんの胸の音が聞こえる。
何に……、誰に、ドキドキしてるの?
怖くて、抱き締め返す勇気がない。
「先輩は、本当にちっこい……」
「…………」
どこが?背?背だよね?
全体的なことを言ってるんだよね?
一部分のことじゃないよね?
「真幸くんに比べたら、大体の女子はちっちゃいよ」
背のことを言っているのなら。
「うん……」
あたしを離し、真幸くんは淡い光のように笑った。
「このちっこい体で、いつも色んなこと考え込んでんだろーなと思って」
「――」
心を、読まれたのかと思った。
もしかして、やっぱり、沙柚ちゃんとの話を……?
「真幸くん――」
「先輩」
「――さ、……え?」
「しばらく、図書館には行かないでください」
真幸くんの顔が、「それ以上を聞かないで」と訴えているような気がして、あたしは何も言えなかった。
最初のコメントを投稿しよう!