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「帽子好きなの?」
思えば、一緒にいるときはよく帽子をかぶっている気がする。
夏は、野球帽の率が高かった。
「うん、押し入れにいっぱい入ってます」
「そうなんだ」
前に部屋にお邪魔したときに帽子が見えなかったのは、押し入れにあったからか。
ふたりでメンズ用の服屋さんに行って、帽子のコーナーに。
冬だから、ニット帽が多い。
「お、この黒いやつかっこいい」
真幸くんが、シンプルな黒いニット帽を手に取る。
かぶって、目の前に設置されてある鏡を見る前に、あたしを見た。
「これ、どう?」
ナナメにズレてる。
右目が今にも隠れそう。
そういう詰めの甘いところが可愛くて、つい笑ってしまう。
「ふっ……、ふふ……、ちょっと深すぎかな」
「えー、そうですか?直して」
目の前に鏡があるんだからそれを見れば一番簡単なのに、真幸くんはあたしの前で屈んだ。
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