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深沢先生にあいさつをして保健室を出て、駐輪所に。
「さっむー。あれ、鍵鍵ー、チャリのー」
ひとりごとを言いながら、真幸くんが制服のポケットを探る。
冬は、昼も寒いけど、やっぱり夜の寒さは段違い。
雪は降っていないけど、道路は凍みている。
こんなところで転んだら危ないな……。
「あった」
鍵を見つけ、
「そうだ、本屋寄っていい?64巻出てるか、見たい」
「うん」
真幸くんが慣れた手つきで鍵あけをする。
64巻っていうと、健太くんと話していた漫画のことだろうな。
本屋……、沙柚ちゃんと出会ったのも、そこだった。
あの時は、必死に生徒手帳を探しに来たんだったよね。
まさか、“大事なもの”が、映画の半券だなんて、思いもしなかった。
「“トンネルの惨劇”って、沙柚ちゃんも行ったんだね」
変に疑ったままでいるのは嫌だから、直接聞く。
「え?あー、野球部ですからね。でも本当は、あいつは乗り気じゃなかったかも」
「なんで?」
沙柚ちゃんがホラー好きなことは、図書館で観ていたパソコンの動画で証明された。
ホラー映画を観に行くのに、乗り気じゃない理由って……。
「映画の後から、更に性格キツくなったし。ほら、乗って」
「うん……」
すでに運転席に座っている真幸くんの体に、腕を回す。
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