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具合が悪くて来たはずの保健室だったのに、今の出来事のおかげで、どこかに飛んでいってしまったみたい。
起き上がって、座ってグラウンドの真幸くんを見てよう。
……グラウンド?
「あっ、真幸くん、部活は――」
ハッとして、グラウンドを見る。
全員ではないけど、野球部員が集まりだしている。
このベッドには、窓を隠すカーテンがない。
窓に付いているブラインドは、今は意味を成していない。
グラウンドにいる数名で、こっちに注目している人はいないけど……。
「……み、見られた?」
声が震える。
「え、どうだろ。後で聞いてみる」
「だっ、だめ!」
マイペースに、なんてことを言ってくれるんだろう。
真幸くんは何で平気なの?
「……隠れたい……」
今さら隠れたところで、意味はないのだけど。
「マジ?じゃあ、おわびに隠してあげる」
「っあ……」
ふたりでベッドに座って、あたしは真幸くんの腕に抱き締められている。
隠すっていうか、確かにあたしからは何も見えないけど。
さっきは、あんなに男らしかったのに、今はすっかりいつもの真幸くん。
どっちにしろ、ドキドキさせられる。
本当に、ズルいと思う。
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