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あたしは窓際に行って、窓を開ける。
「っ!」
冷たい風が吹き込んできて、身が震えた。
「さっきまで具合悪かったのに、また風邪引いちゃうわよー?」
先生が内山くんのそばに座る。
「ご、ごめんなさい……」
窓を開けても平気だなんて勘違いしたのは、さっきまで夏の夢を見ていたからかな。
“今”の真幸くんを、いっぱい確認したはずだったのに。
窓を閉めようとしたら、
「っ、真幸くん!」
グラウンドに野球のユニフォーム姿がまたひとり増えて、手を振ってくれた。
あたしも振り返す。
「もう着替えたんだ。あいつ早いねー」
先生の、呆れるような感心するような声と共に、プチっと小さな破裂音。紙パックのジュースにストローを刺した音。
「緋芽ちゃんも視力いいねぇー」
そして、いつもの調子で、内山くん。
あたしは、まだ内山くんの顔をじっくり見れないくらい気まずいのだけど、本人はそんなに気にしていないみたい。
今も、先生と同じポーズでストローに口を付けている。
仲良し……。
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