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何、その可愛い理由は……。
本人に向かって言うと怒るから、心の中でじたばた足をバタバタさせるだけで、我慢する。
「どんなメール送ったの?こいつ、絶対その画面見せてくんないんだよね」
「どんなって……」
自分が作成した文章を、頭に思い描く。
普通に、『誕生日おめでとう』とか、『今日会いに行くね』とか。
あとは、カラフルにデコレーションしたりとか。
そして、最後に『好きです』って、書いた……。
「今日、俺に「家に帰ってくんな」って言ったことと、何か関係ある?」
「え……、と」
言えるわけがない。
真幸くんは、「都合よく家に誰もいない」なんて言ってたけど、真実は少し違うっぽい。
ご両親の旅行は、本当に偶然なんだろうけど。
上手い誤魔化し方が思い付かない。
あたしは黙って、目を伏せた。
多分、顔赤い。
そして、下を向いても、耳の赤さでバレている。
お兄さんは、何か感づいたのか、手をぱちんとひとつ叩いた。
「そうだ。真幸の保険証取りに行くんだった」
と、立ち上がり、
「邪魔して悪かったね。寝てるうちに、まぶたに油性ペンで目ぇ書いてもいいから。本当は、俺がそれやりたいけど。じゃ、ちょい行ってくる」
去り際まで、言うことが真幸くんのお兄さんって感じ。
あたしが頭を下げると、お兄さんは病室を出ていった。
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