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岡田とも会社でしか会わない。
だからすぐ忘れられる筈なんだ。
コンビニで買った弁当も半分しか食べられず、シャワーを浴びて早々に布団に入る。
もう俺の布団からは岡田の匂いはしない。
それでも何かを求めるように布団の端を握って身体を丸めた。
「岡田……」
ごめんな、岡田。
お前に彼女が居るのを解ってたんだから、もっと早く諦めるべきだったんだよな。
でも、好きだったんだ。
『仕方ないな』って俺の仕事を手伝ってくれる時の困ったような笑顔も、喫煙室でタバコを吸う長い指も、俺が契約を取れた時に『頑張ったな』と褒めてくれたのも。
好きで好きで、目が離せなかった。
鼻がツンと痛くなってギュッと目を瞑ると、目尻から温かい滴が溢れる。
「ごめんな……」
この想いと一緒に、自分も消えてしまえたらいいのに。
何も残らなくていい。
俺自身も……。
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