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「お~か~だ~……!」
安心した途端に怒りが沸々と湧き上がり、岡田の絞めているネクタイを掴んでグッと引っ張る。
「だったら何で最初から俺に言わないんだよ!」
「彼女の事か? まさか誤解してるなんて思わなかったし。それに……」
岡田の手が俺の顎に添えられ、クイッと顔を上向かせられた。
「お前が、本気じゃないのかって心配だったから」
「俺は……」
「お前、すぐに諦める悪い癖があるだろ? だから俺の事も、身体だけでいいなんて諦めてんじゃないかって」
見透かされたいたたまれなさから目を伏せると、岡田の顔が近付いてきて口唇が触れ合う。
「本気になれよ、俺に」
初めてキスをした時のような、挑発的な瞳。
その瞳に真っ直ぐに見つめられて、じんっと胸が震える。
本気になってもいいのか?
好きだって、お前を求めていいのか?
「俺はとっくに本気だ。井上、お前が欲しい」
岡田の言葉に、俺は再び思い知らされた。
「俺も……お前が欲しいよ」
この男が好きで堪らないんだって。
【終】
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