いつか…やさしい雨が

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「橋本、まだここに居るのか?」 声を掛けると、佇んでいた男がゆっくりとこちらに顔を向けた。 「小川……」 「ずっとここに居たって、何も変わらない。それでも動かないのか?」 動かない、ってより動けないのか。 ザァザァと強く降る雨が俺の持っている傘に当たり、ボツボツと大きな音を立てている。 それでも俺の声はちゃんと聞こえているんだろう? 青白い顔で立ち尽くしているこの男、橋本は俺の大学での友達。 高校は別で、大学に入学して同じ学部になってから仲良くなった。 妙に気が合って教室移動の時も飯の時も、ずっと一緒に居た。 こうして、橋本が雨に打たれるようになるまで。 「俺は……どうすればいい?」 小声だけど雨音に消えない橋本の問いに、はぁ、と溜め息を吐く。 「知らねぇよ。お前が何を考えてるのかも解んねぇし」 .
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