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ずっと一緒に居た。
色んな話をした。
それでも、最後まで橋本が何に悩んでるかは解らなかった。
『友達なんだから、何かあったら言えよ』
そう言えばお前は辛そうに無理に笑顔を作っていたから。
橋本の足元、ガードレール脇には萎れかけた花束が無情に雨に濡れている。
「どうすればいいか、解らないんだ。進みたいのに進めない」
「だから俺がこうして来てやったんだろうが」
「そうだな、小川は口は悪いけど優しい」
「口は悪い、は余計だ」
バシャッと水溜まりを踏みつけると、橋本がフワリと微笑む。
「だから、小川に言いたくても言えなかった」
「何を」
「言ってもいいのか?」
そう尋ねるくせに、橋本は俺じゃなく正面を向いて流れるように走る車をじっと見ていた。
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