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「ど、どうして……、名前」
「ん? 呼び捨てにするのか? って?」
「う、うん……」
「呼びたいから……、ではダメ?」
「……」
「柏木さんより、実尋って、呼びたい……」
「……」
「その方が近く感じられるから……」
「どうして、私に近づきたいの?」
ちゃんといってくれなきゃわからないよ……
すると、コージが、テーブルを回って私の方に近づいてきた。スッと目の前にしゃがみこむと、ソファに座る私よりの目線が低くなり、私が見下ろす形になった。
「いっぱい泣かせてごめん……ひどい事、いっぱい言って、傷つけた……付き合えないって言ったけど……君をあきらめるのはどうやら無理みたいだ……」
「……」
「好きなんだ……ずっと前から」
「っ」
喉の奥がヒュッとなった。じんわりと視界がぼやけていく。
「俺と付き合ってくれる?」
そう言って、そっと頬に触れたコージの指先。触れた瞬間、条件反射のように目を閉じたら、頬を流れ落ちていった涙。
「もう、俺の事嫌いになった?」
親指でそっと涙を拭う仕草。愛しさが私の中から溢れだす。
「うぅっ……」
嗚咽。
「絶対、幸せにするからさ……、うん、て言えよ」
どこか偉そうなコージの言葉に、目を丸くして、コージを見上げたら、
「好きだよ」
同時に、視界がコージでいっぱいになった。ふんわりと優しくコージの唇が私の口を塞いでた。
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