第1章

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びっくりしすぎて、目を閉じるのを忘れてしまった。コージの長い睫が見える。触れるだけの優しいキス。キス…… キス、しちゃった……それも、コージと…… 大人になってから、キスをしたのは初めてのこと。今まで、彼氏いたことないし――、でも、キスをしたことはある。あれは小学二年生だったけれど……隣の席に座っていた男子に、お遊びみたいに奪われた唇。 あれがファーストキス? それとも、これがファーストキス? どっち? そんな事を考えていたら、ゆっくりと離れた唇が、 「キスしながら、他の事考えるなんて、随分余裕だな?」 少し笑って、皮肉を吐く。 「えっ……」 ボンヤリしていた頭が急に現実に引き戻されて、すぐ近くにあるコージの顔へと焦点を合わす。 「何考えてるの?」 そう問われて… 「前にキスした時のこと……」 馬鹿正直に答えたら、 「マジ、ムカつく」 そう言って、噛みつくように再び塞がれた。 「んっ」 突然の攻撃に、鼻から息が漏れる。さっきとは違う、押し付けるようなキス。何度も唇を吸い上げられ、身体の力が抜けていく。それと同時に、私の瞼も落ちていく。目を閉じると、いっそう感覚が研ぎ澄まされていき、コージの甘いキスに、私は完全に溺れていった。
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