173人が本棚に入れています
本棚に追加
ギョッとした私の手を引いて、エレベータに乗り込んだ私達。ものすごい早さで上昇していく。いったい、何階に住んでるよの……進んでいく数字に、目が点だ。
こんなところに住んでるなんて……コージってお金持ちだったの? 親が? お坊ちゃまとか? そもそも、俺んち、って一人暮らしってこと?
誰かいても困るけど、いないのも困るんですけど、一人アタフタする私。
――と、手を引かれて、エレベータをおろされた。
「わっと、」
転ばなくてよかったぁ~、とホッと息を吐いたところで、またも歩き出したコージについていく。
と、ドアの前で止まった足。コージが鍵のロックを外す。
「ね、ねぇ、」
「ん?」
ドアノブと握ったままコージが手を止め、私を振り仰いだ。
「だ、誰かいるの?急にお邪魔して大丈夫なのかな? 私何も手土産とか持って来てない……」
テンパった頭で必死に考える。
「兄貴と住んでる、土産なんていらない」
「お、お兄さん?」
「うん」
「お兄さん、いたんだ……」
「あぁ……」
それが、なに? って、顔をされた。改めて思ったけど、私って、ほんとコージのこと、何も知らないんだなぁ…って――、なんだか、急に寂しくなった……
最初のコメントを投稿しよう!