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「何、凹んでるの?」
ハッと我に返ったら、覗き込むようにしてコージが私を見ていた。
「えっ? あっ、なんでもない」
首を振って、無理に笑おうとしたら、呆れた目線を飛ばされた。
「心配しなくても、兄貴はいないよ、出かけてるし……、しばらく帰ってくる予定はない」
「そ、そうなの?」
誰もいないんだ……
「あぁ……だから、ここに連れてきたんだしな」
誰もいないから、ここ、に?
「……」
「兄貴がいたら、根掘り葉掘り聞かれてめんどくさいし」
「めんどくさいんだ」
お兄さんが? それとも私が?
――なんだか私の気がする。
そんなハッキリ言わなくてもいいのに、自分がめんどくさい人間なのは、言われなくてもわかってるよ、
はぁ~、なんか、またさらに、凹む……コージは、私を落とす天才だ……
ガックリと肩を落とす私に、ガチャッと扉を開き、
「入って」
と一言。
もう後戻りはできない。とにかく、聞きたいことがいっぱいだし、この一歩は、私とコージの境界線を越えることになる。もしかしたら、また泣くことになるかもしれない。また、傷つくことになるかもしれない。不安はいっぱいだけど……私はもっとコージに近づきたい……そう強く思ったから、
「お、邪魔、します……」
震えそうな声で断りを入れ、私は一歩を踏み出した。
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