第1章

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「何、凹んでるの?」 ハッと我に返ったら、覗き込むようにしてコージが私を見ていた。 「えっ? あっ、なんでもない」 首を振って、無理に笑おうとしたら、呆れた目線を飛ばされた。 「心配しなくても、兄貴はいないよ、出かけてるし……、しばらく帰ってくる予定はない」 「そ、そうなの?」 誰もいないんだ…… 「あぁ……だから、ここに連れてきたんだしな」 誰もいないから、ここ、に? 「……」 「兄貴がいたら、根掘り葉掘り聞かれてめんどくさいし」 「めんどくさいんだ」 お兄さんが? それとも私が?  ――なんだか私の気がする。 そんなハッキリ言わなくてもいいのに、自分がめんどくさい人間なのは、言われなくてもわかってるよ、 はぁ~、なんか、またさらに、凹む……コージは、私を落とす天才だ…… ガックリと肩を落とす私に、ガチャッと扉を開き、 「入って」 と一言。 もう後戻りはできない。とにかく、聞きたいことがいっぱいだし、この一歩は、私とコージの境界線を越えることになる。もしかしたら、また泣くことになるかもしれない。また、傷つくことになるかもしれない。不安はいっぱいだけど……私はもっとコージに近づきたい……そう強く思ったから、 「お、邪魔、します……」 震えそうな声で断りを入れ、私は一歩を踏み出した。
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