第1章

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視線の先……床が濡れていた。なんであそこだけ水たまり? 首を傾げた私。 よく見ると、その周辺、あちこちが濡れていた。まるで、ビショビショのまま歩いた後みたい…… 「お待たせ」 コージがお盆にのせたアイスコーヒーをテーブルにのせた。 「あっ、あり、がと」 「うん?……どうかした?」 何かに気付いたコージが私に尋ねる。 「うん……あそこ、どうしてビショビショなの?」 指さす先に、コージの視線が向けられて…… 「えっ?……あ~……あれ?」 苦笑いで、私へと視線を戻した。コクリと頷いた私に、照れくさそうにポリポリと頭をかいたあと、話ずらそうにして教えてくれた。 「シャワー浴びてる最中に、慌てて、飛び出したから……床が濡れたんだよ……そういえば、拭くの忘れてた」 ヘニャリと下げた眉。あまり見たことのない表情に、目を奪われながら、私はコージの言った意味を、頭の中でゆっくりと噛み砕いていた。 「……慌てて?」 「うん、いてもたってもいられなくなって、飛び出したから、タオルでふく余裕がなかった……」 「……それって、私のせい?」 「ん~~~~~~~……せい、ではない……ため、ではあるけれど」 「……ため……」 「そっ、実尋に会うため」 「っっ!」 また、実尋と、呼び捨てにされ、ドクンと心臓が跳ねる。
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