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視線の先……床が濡れていた。なんであそこだけ水たまり? 首を傾げた私。
よく見ると、その周辺、あちこちが濡れていた。まるで、ビショビショのまま歩いた後みたい……
「お待たせ」
コージがお盆にのせたアイスコーヒーをテーブルにのせた。
「あっ、あり、がと」
「うん?……どうかした?」
何かに気付いたコージが私に尋ねる。
「うん……あそこ、どうしてビショビショなの?」
指さす先に、コージの視線が向けられて……
「えっ?……あ~……あれ?」
苦笑いで、私へと視線を戻した。コクリと頷いた私に、照れくさそうにポリポリと頭をかいたあと、話ずらそうにして教えてくれた。
「シャワー浴びてる最中に、慌てて、飛び出したから……床が濡れたんだよ……そういえば、拭くの忘れてた」
ヘニャリと下げた眉。あまり見たことのない表情に、目を奪われながら、私はコージの言った意味を、頭の中でゆっくりと噛み砕いていた。
「……慌てて?」
「うん、いてもたってもいられなくなって、飛び出したから、タオルでふく余裕がなかった……」
「……それって、私のせい?」
「ん~~~~~~~……せい、ではない……ため、ではあるけれど」
「……ため……」
「そっ、実尋に会うため」
「っっ!」
また、実尋と、呼び捨てにされ、ドクンと心臓が跳ねる。
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