凪の海

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 50年の時を隔てた二組の男女の話である。 話しは、 それぞれのカップルの男女がまだ出会う前から始めなければならない  まず一組目のカップルだ。 彼らは1950年6月、 場所は違えども、 夜空に浮かぶ同じ月を眺めていた。  男は泰滋。 同志社大学の商学部2年生。 彼が月を見上げている場所は京都・賀茂川の河原。 そして女はミチエ。 千葉女子高2年生。 彼女が見上げている場所は、 自宅の勝手口にある水場である。  このふたりは、 1945年の終戦を中学生と小学生の時代に迎えたのだが、 住む場所の違いか、 戦争の経験がまるで違う。
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