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「そうか、
年齢的には適合だな。
体型も悪くない。
しかし…身体の中のことだから、
検査をしてみないとわからん。
」
「とにかく、
誘いを断れる境遇じゃないことは確かですから。
これ、
あの家族のプロフィールです。
」
男は、
秋良に封筒を渡した。
「ああ、
早速アプローチしてみる。
」
「検査に合格したら、
負債の全額返済と手数料をよろしくお願いしますよ。
」
男はそう言うと秋良の車から出て言った。
秋良は、
彼が去り際に車内に残した下卑た笑いを洗い流すように、
エンジンを始動させてカーオーディオの音量を上げた。
秋良は、
車を歌舞伎町のパーキングに留めると、
派手でゴージャスなネオンをすりぬけて、
ゴールデン街の小さな飲み屋のドアを開けた。
ドアの開く音とともに、
年増の女主人が入って来る秋良の姿を一瞥したが、
彼を客として迎える言葉もなく、
何事もなかったように視線を戻して常連客との会話に戻る。
そこは財力のある彼が行くには不釣り合いな小さく、
そして汚い店ではあったが、
彼はかまわずカウンターの隅に収まった。
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