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秋良は車中で男から受け取った封筒を取り出すと、
あらためて真奈美のプロフィールを眺めた。
家族構成、
家族の生年月日、
父親の死因、
母親の病名、
負債額。
見れば見るほど絶望的な境遇だ。
きっと負債が生み出す月々の利子の額すら稼げていないはずだ。
さらに、
病身の母と高校生の妹を抱えているなんて…。
負債の泥沼に沈んでいくだけで、
今の彼女に積み上げていく未来なんてない。
こんな環境から逃げもせず生きている真奈美が不思議だった。
秋良にしてみれば、
逞しいと言うよりは、
図々しいとしか思えなかった。
「秋良、
持ってきてくれた。
」
近寄って来た女主人が、
カウンター越しに秋良に話かけた。
秋良は黙って内ポケットから、
分厚い茶封筒を取りだすと、
女主人の前に無造作に投げ出す。
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