ウ・テ・ル・ス

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「ここのオフィスに配達か?」  入口にたたずむ真奈美に男が背後から声を掛けた。 仕事が終わってすぐ駆け付けた真奈美は、 まだ配送スタッフのユニフォームを着たままだった。 「いえ…。 」  問いかけられた真奈美が振り返ると、 髪をチックでしっかりと整え、 見事にフォーマルを着こなした若い紳士が立っていた。 「荷物ならここで受け取るぞ。 」 「いえ、 配送じゃなくて…呼ばれたんです。 」 「集荷か?」 「違います…配送の仕事が終わったら来いって…」 「誰から?」 「あの…若い男の人で…ギリシア神話に出て来るような…背の高い…肩幅の広い…。 」 「ギリシア神話?…ああ、 社長か。 しかし、 なんで宅配便のにいちゃんを呼ぶ必要が…」  男は、 不審気に真奈美を眺めまわしたすえ、 ようやく理解した。
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