ウ・テ・ル・ス

28/363
前へ
/363ページ
次へ
「それに、 この髪に…この肌…。 いくら肉体労働だとは言え、 無関心過ぎないか。 」  ついにアポロンは、 真奈美の髪を指でつまむぐらいの距離までやって来た。 真奈美は男の『香り』というものを初めて五感に感じた。 それは『匂い』という鼻に着きそうな雑なレベルのものではない。 身体が包まれるように感じる繊細で柔らかなものだった。 真奈美は落ちそうな自分に慌てて鞭を打った。 「仕事終わりで急いできたもので…不快にさせてすみません。 でも、 家に着替えに帰っても、 結局ご期待には沿えないかと…。 」  アポロンはしばらく腕組みをして真奈美を見つめていが、 やがてデスクに戻り上着を引っ掛けると彼女の腕を取った。
/363ページ

最初のコメントを投稿しよう!

38人が本棚に入れています
本棚に追加