第5話 温もりだけが残る情事

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ふっと、息をつくために離れた唇が、すでに恋しい。 「…やばいかも。」 「え?」 「すごい、固くなった」 私の右手を掴んで導いたのは、おへその下の、窮屈そうに押し上げられている男性特有の部分。 倉坂さんの言葉通りにそこはしっかり主張をしていて、思わず手を当てて摩りながら、見つめてしまった。 「…真実ちゃんって」 「え?」 私の様子を面白そうに見つめて、吸いかけの煙草を灰皿に押し当てる。 「何考えてるか、解らないね。」 「え、え? それはどういう…」 「なんか、裏がありそう。」 「裏…」 云われた意味が悪いのか良いのか解らずぽかんとしていると、倉坂さんが私の手を外して席を立った。 …あ。これ以上は、さすがにね。 店内だし。 一人で納得して少し残念、いやだいぶ離れたくなかった気持ちと、安心が広がったのもつかの間。 倉坂さんが入り口まで行って何かを確認した後戻ってきたときに、明りを落とす動作を見て、びくりと体が揺れた。 まさか… 「こっち、おいで」 やんわりと、でも有無を言わせない物言いと雰囲気に、 一気に余韻に浸っていた体が再度熱くなった。 「え、でも…」 「いやだ?」 この間でその仕草と問いかけは卑怯だ。 軽くこちらを伺うように首を傾げる動作が、女々しくなくて、悔しい。 引き寄せられるように椅子を降りて近付けば、広げた両腕が力強く私の体を引き寄せて胸元に収める。 そのまま流れるように唇を合わせてまたもや甘い刺激を味わう。
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