第1章

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情事後特有の気怠さの抱えた体を引きずって帰りついた部屋。 バッグを床に置いて、羽織っていたトレンチコートを脱ぎ捨てて、そのままのベッドに倒れこむ。 眠いと訴える体と興奮が覚め止まない頭。 さっきまで触れ合い、彼を受け入れてた体。 そして言い様のない、絶望感とわずかな期待が私の中を占めていく。 私にたいして好意がないはずない。 でもきっと、その他大勢の一人。 もしかしたら店内であんなことができる人だから、他にも? 3日間のうちに出会った女性客を思い出してぞくりと悪寒が走る。 そんなふしだらで、不誠実な人だと思いたくない。 曲がりなりにもお店の責任者。 それに… さっきまで一緒にいた倉阪さんの顔を思い出して 胸が焦げるように熱くなる。 その熱で体が焼け落ちていくかのよう… あの響くように耳に届く声 何もかも見透かすように鋭くまっすぐ見つめてくる瞳 呼吸が無意識に浅くなって、頬が火照る。 もう、 私は恋してしまっている。 触れられた温もりが決め手なんて 愚かかもしれない。 それでも私の心には今 その答え以外見つからなかった。
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