175人が本棚に入れています
本棚に追加
『まだ遊びたいんすね』
コロナを口に含みながら
リクさんが言った言葉がぐるぐる頭を巡る。
私は遊びたいのかな?
刺激的な体験がしたかっただけなのかな。
非日常な空間、普段接した事ないタイプの人達。
新しい飲み場。
どれもが初めての体験で、
新鮮。
でも、この気持ちは?
ただ、倉坂さんに刺激を求めてるだけで、ここまで切なくなるものなの?
酔いが回った私の目線は遠慮なく倉坂さんに向けられている。
変わらずに常連さん達に勧められるままテキーラやら飲んではしゃいでる姿が可愛くて愛しくて、胸が暖かくなる。
だめ、だ
あまり見過ぎたら他のお客さんにも気持ちが伝わってしまう。
そう自覚した瞬間に、
倉坂さんがこちらに顔を向けた。
思わず、初心な女の子のように表情が強張ってしまう。
「楽しんでる?」
かれこれ1時間ぶりに、オーダじゃない言葉をかけて貰えた事が、こんなに嬉しいなんて…。
「はい、楽しいです」
「みんないい奴だから警戒しないで打ち解けて」
言い終えると同時に口元を引き上げて微笑む姿が、私にとって完璧な仕草に見えて、惚けてしまう。
また倉坂さんはすぐに他のお客さんに目を向けて話を始める。
私はどうしたら、そんな風に気にかけて貰えるのかな…。
もっと通いつめて常連になったら??
でも、それは
私が望む関係性なのかな…。
お客さんとして構われたいのか、
倉坂さんに男として構われたいのか…。
最初のコメントを投稿しよう!