第1章

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玄関に入って荒々しく鞄を床に放り投げて服を無我夢中で脱ぎ捨てる。 身体がザワザワして落ち着かない 寝込みたいのに、考えこんでしまいそうで、身体が拒否する。 とりあえず、洗面所へ… アルコールで朦朧とする視界と思考で、鏡に映った自分を見つめた。 そこには、世界中の不幸を背負ったような顔をした悲壮感溢れる、情けない愚かな女がいた。 歪んだ眉と口元。 赤みがさして潤んだ目。 剥げかけた化粧。 引くくらいに、悲劇のヒロインを気取った女。 これが、今の私… とてもじゃないけれど、 綺麗とも可愛いとも表現出来ない、陰鬱な空気を纏った自分に嫌悪を覚えた。 なにこれ。 こんな顔を最後に倉坂さんに見せて、すがろうとしたの。。。 まるで、二流の泥沼愛憎劇に出てくる醜い女役のよう。 違う こんなの私じゃない 私はこんなに惨めで愚かな、女の性に堕ちたりしたくない 感情のままに動いて喚いて、 その時の勢いのまま、構って欲しくて冷静な判断が出来ずに誤解を招いて、人のせいにするような そんな女になりたいわけじゃない。 ちゃんと話しがしたかったの どんな人なのか、 どんな物が好きなのか どんな人生を歩んできて 何が嫌いなのか ちゃんと彼のことを知ってきちんと好きだと感じたかったのに。 今の私は彼の目に、きっと寂しくて誰でもいいから頼りたくて、好きでもないのに簡単に体を許す女と思われてる。 中身のない女
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