第1章

5/6
180人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
何を期待していた? 何を一人で浮かれてた? 何を確証に好かれてると思ってた? 何で、ちゃんと自分の意見を言えないの… 躓きそうになる足をなんとか保たせて、家路を急ぐ。 ここにいたくない、 早く、早く 離れて 一刻も早く記憶を消す用意をしなきゃ… じゃないと、おかしくなってしまう こんな記憶はいらない こんな経験はいらない こんな気持ちは早く捨てて 忘れないと 忘れて、次の人を見つけて、 抱きしめて貰うんだ 力一杯 私を守ってくれる腕 探さないと 探さないと 思考回路がショートしたように同じ言葉、同じ答えを繰り返す。 言い聞かせないと 何かが壊れてしまいそうだった 私を平常に繋ぐもの。 失くしてしまったら、何をするか分からない。 ぐわんぐわん揺れる視界と痛む胸。 エントランスを通ってエレベーターを待つ。 時間の感覚が曖昧だ。 10秒ほどの事が、5分位経ったように感じるし、まだほんの一瞬のような気がする。 これは、現実なんだよね。 覆らない現実で、 起きたら何もかも白紙に戻ってくれてるとか、ないよね。 こんなに、情けなくて 悔しくて悲しくて 苦しい想いがあるの? こんな想いを今まで遠巻きに見ていた恋多き女性達はしていたの? だとしたら、どう立ち直ったの、 どうやって相手の気持ちを手に入れて幸せな関係を築けたの。 私はもう、 2度とあの人と普通に会えないのかな… 狂った思考回路が矛盾を紡ぐ。 早く忘れないとと、さっき心底感じたのに 残った恋心が僅かな希望を見出そうとする。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!