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だから、その怖さをまぎらわせるために普段は当時家で飼っていた犬を一緒に連れていって側で待たせたりしていたと言うんですけど。
そんなある日のことです。
風の強い夜だった、と言ってましたかね。
就寝前のトイレへ行かないといけなかった母は、いつも通り飼っていた犬を連れ出して外にあるトイレへ向かったんです。
持ってきた蝋燭に火を点けて、近くに置く。
「チビ、ちゃんと待ってるんだよ?」
側に座る犬に言い聞かせ、和式の、現代ではもうほとんど無くなりつつある落下式の――綺麗な言葉ではないですが、ぼっとん便所なんて言い方もされてますね――便器へまたがる。
実際話を聞いたときは信じられなかったんですけど、昔の田舎にあるトイレってドアがない所もあったそうなんですよ。
なので、道路から個室が丸見えになるわけで、中で用を足す人は誰かの足音が近づいてくるととわざと咳をしたり中から唾を吐いたりしてこっち来るなよ、みたいな無言のやり取りをしていたらしいです。
それで、このとき母が使っていたトイレも可哀そうなことにドアの無いタイプの外トイレ。
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