‡ちぐはぐな老人‡

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ほっ……。 何も無かったなと安堵しながら通り過ぎ、数歩歩いてから。 (しかし、こんな時間に病院の前であんな爺さんが突っ立ってたら気持ち悪いよなぁ……) どうしても気になり一度だけ老人へと振り向いた。 すると、その瞬間―― 「――!?」 すれ違い、今はこちらへ背を向けていたはずの老人の上半身だけが、まるでボトルのキャップを回すような滑らかな動きでスルリと回転して父の方を向いた。 あまりに突然の事態に父がぎょっとなっていると、その老人はまるで動く床にでも乗っているかのような、生きた人間にはあり得ない滑るような動きでそのまま父とは逆の方向へと去って行ってしまったという。 「あれなぁ……未だに何だったのかわかんねぇんだよな。ただ、薄気味悪かったのは確かだけどな」 そう言って、当時を振り返った父は幽霊の存在には否定的です。 現在も幽霊だとは考えていないようですが、その事実は未だ誰にもわからずじまいです……。
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