‡家にいたのは……‡

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これは誰かから聞いたって言うより、周辺住民が共通して話していた噂話みたいなものなんですけど。 私が高校二年の頃まで住んでいた家は、地主さんの家に地代を納めに行かなければいけなかったんですね。 すごく近所なんですけど、小さい頃はよく母親にくっ付いて一緒にその地主さんの家に行ってたりしたんですよ。 いつも対応してくれていたのは、四十代くらいのおばさんでした。 地主の息子の元へ嫁いだお嫁さん。だったんですけど、当時の私にいちいちそんなことはわからなかったんですが。 専業主婦をしていたのか、大抵は家にいて他の人が地代を払いに来た時もこの人が対応をしていた。 そんなある日。 もう何年前のことか、ちょっと記憶が曖昧なんですけれどこのおばさんが二階にある自室で首を吊って自殺してしまう事件がありまして。 当然、その日を境にして地代を持って行っても対応してくれるのはおばさんではなくなり、その義理の母親、お婆さんになってしまった。 それでも、土地を借りている人は今まで通りお金は払わなければいけないわけですから地主の家へと足を運びます。
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