第4話 カタメの世界 2

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花房医師の言葉に、竹山は頷いた。 十年前、水族園で出会った、怯えた目をした姿。 「……詳しい事情は知らないんだけど。リリコちゃんに、頼まれてたんだよね。 あの子に、緊急の時はうちに行く様言ったって」 「そうですか」と言ってから、竹山は黙る。 「竹山さんは、何か聞いてないの? ちゃんと、毎日、連絡取ってるんだよね?」 花房医師に、また睨まれ、少ししてから答える。 「……最近は、メールのやりとりだけで、……その前から、仕事の事は、俺には話さないので」 返された大きなため息に、竹山は視線を下げる。 「……松……松波に、様子を聞いても、詳しくは教えてくれないので……」 「竹山さん」と聞こえ、いつの間にか下がっていた顔を向けた。 「あんた、馬鹿なの?」
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