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垂れている目を吊り上げ、花房医師が珍しく早口で言う。
「そんなね、中途半端な事して、リリコちゃんがどんな気持ちか、分かってん
の? 私はね、泣く泣く、その役目をゆずったんだよ?」
口を止め、花房医師は両肩を上下させた。
皆に怒られてばかりだなと思い、竹山は「すいません」と言うのを我慢した。
「……ごめんね。つい、リリコちゃんの事になると……」
花房医師が両目を下げ、小さく言った。
「いえ」と言ってから、竹山は言葉を重ねていく。
「……自分でも、情けないと思ってます。あいつは、……もっとひどい事されて、十年、脅され続けて、……俺は、思い出しただけなのに」
両膝の上、竹山は震え出した両手を握る。
「……撃った感触が、消えてくれないんですよ。……撃った時の、気持ちも……」
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